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2010年2月28日日曜日

KY

この話はほんの一例にすぎません&hellip

某月 某日 気温9度

「輪ゴム〜!輪ゴム売ってくださ〜い!」
日中、レジに長蛇の列が出来ている中、叫びながら店内に入って来た小肥りの男。
「輪ゴムありませんか〜?!」
(なんだよ、このクソ忙しいときに&hellip店内捜せばちゃんとわかるところにあるじゃん&hellip)
ワタシはレジを打ちながらちょっと大声で
「そこの通路入って、奥の棚の一番上に箱入りと徳用袋のがありまーす!」
男、また大声で

「違うんですー!輪ゴム1本売ってほしいんですー!」
(は〜っ?!)
一瞬、忙しくレジ打ちしていた手を止め、男の顔を見る。その顔は真剣そのもの。
男はレジ待ちのお客さんの列を掻き分け、レジのところまで。
「輪ゴム1本売ってもらえます〜?!」
(輪ゴム一本なんて金取れるワケないでしょ&hellip)
ワタシは手元にあるレジ用の輪ゴムの束から2、3本つまみ、愛想笑いを浮かべながら、男に差し伸べました。
「どうぞ〜♪」
(忙しいから早くあっち行ってくれ!)
男はフトコロから小銭入れを取り出し、
「いくらですか?!」近くまで寄ってるのに声がデカい&hellip
「いいえ、結構ですよ」
「いやいや、いくらなんですか?!」
「いやいやホントお構いなく!」
(「一万円になります」って言って払うのかー?!頼むから早く向こう行ってくれー!)
相変わらずレジの対応に追われるワタシ。
「いやぁ、いいのかなぁ、なんか悪いなぁ、お金払わなくてぇ」
他の人に聞こえるような声でレジから離れていく男。

店から出ていく寸前、レジに向かってまたまた声を張り上げ、
「ホント恩に着りまーす!またあとで買いに来ますからー!」
「&hellip」
(期待してないよー!)
いままで同じようなことしてあげたヒトが、同じような事を言って、再び来てくれた試しがほとんどありません。

黙々とレジを打ち続けるワタシ。再び出入口が叫び声。
「絶対あとで来ますからーっ!」
「はいはーいっ!」
レジをひたすら打ち続けながら、大声で返すワタシ&hellip

案の定、その男はそれ以降見掛けることはありませんでした。

2010年2月24日水曜日

下を向いて歩こう【後編】

前回のつづきです。

某月 某日 気温24℃

それはワタシがこの店に勤務してから5日後のことです。
その日、まだこの店に馴れてないため閉店業務に追われてしまい、すっかり帰りが遅くなってしまいました。
ワタシは店を出ると、ケータイで終電の時間を検索しながら、足早に駅に向かっていました。

あ、何とか間に合いそうだ。
ケータイの時刻表サイトで最終電車の時間を確認し、ホッとした瞬間です。
わっ!
突如何かに足を引っ掛けてつまづいてしまったのです。
なんだよ〜、と思いながら振り返り、つまづいたものを確認しました。

人の…足??
そこには、歩道から上半身だけ路上に投げ出された状態になっている、ランニング姿のオッサンが横たわっていました。
恐る恐る近づいてみると…そのオッサン、寝ておりました。
路上でヨッパラって寝ているオッサンは、時折見かけるので何とも思わないんですが、ココまで大胆に道路に身を投げて寝ているのは見たことありません!
もし車が道端に幅寄せしときたらどうすんの?
起こしてやろうか?まだこの地域に初(うぶ)だったワタシは、一瞬考えたのですが、終電のこともあり、その場を離れ早足で駅へ向かいました。

ワタシはケータイから目を離し、正面を向いて歩き出して気付きました。
確かにいまは8月、夜中といえども、蒸し暑さが続く東京の市街地ですが…
なんと路上就寝者の多いことか!!

閉店したシャッターを背もたれに、崩れるように寝てる人
寝転んでアスファルトに顔をつけ、その冷たさを心地良さそうに感じながら寝てる人
コインバークの空車の車止めを枕に、ゴミか所有物かわからない「何か」にくるまって寝てる人etc…
駅まではおよそ1km近くあるのですが、数十メートルおきに、そういった「雑魚寝びと」と遭遇してしまうのです!

この街は…色々な意味で凄過ぎる
ワタシはこの蒸し暑い季節に、若干肌寒さを覚えていました。
そして、駅に繋がる南側階段を駆け上がろうとしたときです。
階段の昇り口すぐのところに、進路を邪魔するがごとく、「いかにも」といった感じのオッサンが、階段の段差にも関わらず仰向けで倒れており、そのオッサンの投げ出されている足を思わず踏ん付けてしまったのです!

ヤバイ!
ワタシはすぐに足を引き、階段を一、ニ段下がってオッサンの様子を伺いました。
オッサン、相変わらず大きな口を開け、天を仰いだままでピクリともしません。

もしかして…死んでる?
一瞬そんなことまで考えてしまいました。
しかし、この付近に住まいを持つ一般の方々が、オッサンの様子には目もくれず、オッサンの脇を駆け降り家路に急ぎます。こういった風景は、みなさん見慣れているということでしょうか?

終電の時間が近づいてきました。ワタシはオッサンの様子をチラ見しつつ、その場を離れ、階段を駆け上がって行きました…

いま、ワタシは考えるのです。なぜ、ここからの東京スカイツリーの景色に気付かなかったか?
恐らく長田さんが指摘したとおり、この体験がトラウマとなり、自然とこの街では足元を見ながら歩くようになってしまったのではないか?
また、早朝番が定刻の木村さんが気付き、遅番中心のワタシが気付かなかったのは、夜が明けて視界も開け、「雑魚寝びと」が街から消え足元に危険性もないため、堂々と上を向いて歩けたのではないか?
いずれにせよ、この街からスカイツリーを見た時に思うのです。
スカイツリーが東京の「光」とするならば、この山谷地区は東京の「影」ではないかと…

最後に…
先程のトラウマ体験をした翌日、ワタシは早朝番だったのですが、駅から店に向かう北側階段を上がっていくと、昨晩踏ん付けてしまったオッサンが、階段の最上部でほぼ同じ恰好で寝てましたとさ…

2010年2月13日土曜日

下を向いて歩こう【前編】

ちょっと長くなりそうなので2回に分けて語らせていただきます…

某月某日 曇り 気温3℃

早朝番だったワタシは、ちょっと凍てつく感がする山谷の通勤路を、身を少し縮こませながら歩いておりました。
そして、おもむろに顔を上げると、何か建造中の建物が視界に入ってきました。

結構遠方にあるみたいで、手前にある建物と較べると相当高いように思われます。
何だろう?その建物のある方向から考えると…

あっ!東京スカイツリーだ!

正直いうと、ワタシはスカイツリーの建つS区の出身なんですが、周りの建造物などのお陰で、地元でありながら建設中の同タワーをハッキリと拝んだことがなかったのです。
不意のスカイツリーの出現に、ワタシはちょっとした感動と興奮を覚えながら店に向かいました。

店について早々、すでに勤務に就いている木村さんにやや興奮気味に伝えました。
「木村さん!店に来る途中でスカイツリー見えるの、知ってましたぁ?!結構近くにあるように見えるんですよ!やっぱりスカイツリーって高いですね〜。変に感動しちゃいましたよ〜。木村さんもそう思いません?」
木村さんは、何をいまさらといった感じのそぶりで、
「そんなの俺のここに来た初日からわかったよ。今頃何いってんのよ!」
と、軽くあしらわれてしまいました。

ワタシがこの店で働き始めたのは、およそ半年前。木村さんがこの店で働き始めたのは、ワタシよりわずか1ヶ月早いだけで、通勤路といえば、降りる駅は違えども、ある地点からはまったく一緒なのです。
ただ違うところといえば、ワタシの勤務シフトは、ほとんど昼から出勤して閉店するまで勤務している場合(いわゆる遅番)が多いのに対し、木村さんの場合は作業内容から、開店前から勤務に入り夕方帰るシフトになっているのです。
そういえばワタシが今日はじめてスカイツリーに気付いたのも、早朝シフトに入っているからのこと。
そうなると、単なる出勤時間帯によってスカイツリーが見え隠れしてしまうのか?

翌日、いつもの遅番出勤でやってきたワタシは、昨日のスカイツリーの見えた場所にさしかかりました。すると、その建築中の高層な建築物が、しっかりと視界の中に飛び込んでくるではありませんか!!

夜間を除き、いつ何時でも見えるこのタワー、この店に勤めて半年近くになるというのに、いままでなんで気付かなかったのでしょうか?

店に着いてから、本日早番出勤のベテラン従業員の長田さんにも聞いてみることにしました。
長田さんはココでは一番長い勤務歴のある方で、通勤で使う電車も木村さんと一緒。そして勤務シフトは早番もあれば、遅番もこなしオールマイティな時間帯で働いています。
そういう方なので、まさかもう気付いてるとは思ったのですが…

「長田さんはご存知ですよねぇ?店に来る途中でスカイツリー見えるの…」
「エッ!そうなの?!」
素っ頓狂な声で、店内にお客さんがいるにも係わらず、驚き声をあげました。
そして余程感心したみたいで、
「そうかぁ…こんな所でも拝めるんだぁ…なんか夢を感じるよね〜。出来るの楽しみだな〜。」と、しみじみ。

そういえば長田さんは3ヶ月前まで、スカイツリーがあるN橋の姉妹店舗に半年ほど週に1、2度出向していた時期があり、そこで初めて建造中のタワーに出会ったそうです。そしてあまりの大きさにエラく感動し、N橋の出向時にはいケータイでタワーが出来ていく様をほぼ毎日写していたそうで、その何枚かワタシに見せてくれたことがありました。
そんな長田さんがココから見えるスカイツリーの景色に気付かないなんて…。

「なんでウチら気付かなかったんでしょうね?あんなに結構上を向けばハッキリ見えたのに…」
ワタシがいぶかしげに言うと、
「そりゃあ、もちろん!」店内のお客さんが振り向くほどの素っ頓狂な声をまた張り上げ、笑いながら言うのでした。

「だって、ここらへん歩くの、下向いて歩いてないと危なっかしくてしょうがねーじゃん!!」

確かに
の長田さんのひとことで、ワタシがこの店に入ったばかりの頃の体験がトラウマになって、スカイツリーの存在を気付かせなかったのでは?と感じたのです・・・。
(つづく・・・)

2010年2月6日土曜日

無恥との遭遇

前回の「ウチって何屋さん?」をお読みでない方は、そちらから先にお読み下さい。

某月 某日 気温12℃

先日の鈴木くんが遭遇した「小売店で無銭飲食」の話を、この店のベテランパートさんにしたところ、笑いながら言われました。
「そういえば、私もビックリするような経験したわ。」…

それは以前、この店がそのパートさん含め店長と社員計3人だけで運営してたときのことだそうです。
その日の早番は店長とパートさんの二人のみ。
開店してから間もない時間はそれほど店が混まないので、店長がそのうちに昨日の売上金を近くの銀行に預け入れに行っており、しばらくの間パートさん一人で店を見ておりました。

すると毎度のごとく、「いかにもここらへんで寝泊まりしてます」といった雰囲気の男がのろ〜っと入ってきました。
一応パートさん、商品の補充業務をしているフリをしつつ、その男の行動を棚の陰から観察しておりました。
その男は店の中をしばらく徘徊したのち、肌着売場のところでピタッと歩を止め、並べてあるトランクスをジーッと見つめたあと、周りをキョロキョロと伺っていたそうです。
「コイツ、万引き?!」
店内はバートさんとその男の二人だけ。店長は銀行からまだ戻ってません。
何かあったらどうしよう?パートさんの心の中は不安で一杯だったそうです。

すると、ナ、ナ、ナンと!男はその場でゆっくりと、店内で履いていたズボンを下ろしたではありませんか!!
そしてズボンを脱ぐと、並べてあったトランクスを一枚取り上げタグを切ると、いま自分の履いているパンツの上に重ね履きしたのです!!!
パートさん、茫然自失…潜んでいた棚からしばらく動けなかったそうです。

男はトランクスを履き終え、ズボンを再び履き直しました。そして、ベルトをカチャカチャと締め直しているとき、男はおもむろに顔あげたそうです。その視線の先にはパートさんの姿が!
パートさん、思わず目が合いハッとなりつつも、すぐに踵(きびす)をかえしてレジに戻り下を向いたまま、しばらく気をつけの姿勢で突っ伏してたそうです。

「あぁ…店長もまだ戻ってこないし…変なことになったらどうしよう…」
色々なことがパートさんの頭の中を駆け巡っていました。

やがてパンツを2枚履いて身支度を済ませた男は、ゆっくりとレジまでやってきました。
パートさんは顔を上げられず、ただじっとしていました。
そしてついに、その男が澱んだ声でパートさんに話かけました。
「いくら?」
「へっ?」
「いくら?」

アンタ履くの見てたでしょ?と言った感じの語気でその「お客さん」は値段を聞いてきました。
「に、298円です…」
お客さんはズボンのポケットから小銭を取り出し、1円玉と5円玉と10円玉でちょうど298円の会計を済まし、ゆっくりとパンツを2枚履いたまま店を出ていきました…。

そのお客さんと入れ違うように店長が戻ってきた途端、パートさん安堵感と同時に、先ほどの出来事を思い返すと、思わず大声で笑ってしまったそうです。

その話を聞いたワタシは、そのパートさんに大変敬服してしまいました。
フツウの女性が職場でこんな出来事に遭遇したら、二度と来なくなってしまうのではないでしょうか?
そのことも伺ってみると、
「それは最初ビックリしたけど…でもこの街に住んでたら、結構受け入れられちゃうものよ♪

「山谷」という街は、人間をも強くしてくれる街なのです。

2010年2月1日月曜日

ウチって何屋さん??

ちなみに当店は「小売店」です&hellip

某月某日 晴れ 気温11度

この店でベテランのアルバイト鈴木くんが先日、勤務終了の7時になり、あがる前に最終チェックとして、店内をグルッとひと回りしているときのことでした。
アイスクリーム売場にさしかかると、ベージュか白なのか汚れていてハッキリわからないコートを着込み、本物かニセモノかわからないNYマークの帽子を被った「いかにも」という男が、冷凍ショーケースの前で少し前屈みになり立って、なにやら口をモグモグやっているご様子&hellip。
足元にはアイスの空き袋が2つ&hellip鈴木くんは遠目からしばらくその男を観察していました。
男は口の中のものを食べ終わったのか、アイスのショーケースをゆっくりと開け、新たにアイスを取り出し袋から中身を開けようとしました。
「おじさん、何やってんの?」鈴木くんはとっさに男に近寄り声をかけました。男は突然声を掛けられたにも関わらず、驚きもせずゆっくりと鈴木くんの方を向きました。
「何やってんのよ?」鈴木くんは苦笑いしながら、再度男に問いただしました。
「何って&hellip」男はどんよりとした目で鈴木くんの目を見ながらおぼろげな口調で言いました。
「アイス食べてた&hellip」
鈴木くん、なかば呆れ顔。
「金払ったの?」
「払った&hellip」
「じゃあ、レシート見せてよ。」
男は下を向いて、しばらく黙っていました。
鈴木くんはさらに問い詰め、
「どうせ、金払ってないんでしょ?いまここで払ってよ」
男は下を向いたまま、つぶやくように言ったそうです。
「金なんか持ってないよ・・・」
無論、この後警察に引き渡されたのはいうまでもありません。

しかし・・・小売店では正直なところ、「万引き」というものは付き物です。
長年、小売業を経験してきたワタシにとって、万引きの被害がなかったコトは1度もありません。
それが飲食店でない小売店で「無銭飲食」ですヨ?!
そんな事件が起こるなんて、ウチって何屋さんなんでしょ?と思わずにはいられません。

・・・と、これ以上にもっとスゴイ「事件?」を経験されたパートさんがいることで、ワタシのこの疑問はますます深まるのでした・・・